一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

 
 令和7年度「ダムとダム周辺農業の関わり
 ―ダム×周辺農業 交流会 ―」開催報告



活性化推進小委員会 東北地区


東北ブロックでは、ダム啓発活動の一環として、「令和7年度 ダムとダム周辺農業の関わり ―ダム×周辺農業 交流会―」を津軽ダムおよび平川市農地にて、6月27日(金)、28日(土)に開催しましたので、報告いたします。

1.開催目的

本イベントは、①ダムの役割やダムの存在意義などを学生や地域住民に適切に情報発信すること、②農作業を手伝うことにより、高齢化や人手不足など労働力不足に悩む農業の人手不足を解消することの2つを目的とし、開催しております。

2.参加者およびプログラム

参加対象は、将来のダム技術者候補の大学生、大学院生とし、プログラムは、1日目にダム講義およびダム見学、2日目に農作業を体験するというプログラムで実施しました。

3.開催状況

【1日目:ダム講義及びダム見学】        

 まず、講義1として、国土交通省 東北地方整備局 岩木川ダム統合管理事務所 調査課長の五十嵐様より、津軽ダムの概要、施設について説明いただきました。
次に、講義2ではダム工学会活性化小委員会東北地区ブロックの丹羽委員よりダム概論として、学生に向けたダムの構造や日本におけるダムの必要性、多様な役割などについて分かり易く説明していただきました。
最後の講義3では、岩手大学農学部地域環境科学科の山本清仁先生から岩手大学農学部施設機能工学研究室の研究活動を紹介いただき、震災後の農地やため池を含む農業設備の機能診断、大垣ダムの調査状況などを学ばせていただきました。

 これら講義により、学生だけでなく、日常、ダムに関する仕事をしている私たち技術者にとっても非常に有益な時間となりました。
 講義に引き続き、調査課長の五十嵐様にダム堤体、監査廊内をご案内いただきました。ダム天端の見学時には、景観に配慮した照明設備を採用していることや、清水バイパス等について説明していただきました。また、監査廊内では、計測機器やエレベータなどの付属設備の珍しさに驚きながら、コンジットゲートが国内最大級の引張りラジアルゲートである説明などを聞き、学生たちも非常に興味深く質問しながら見学をしていました。

【懇親会】

 1日目の夜は、学生と大学先生、ダム工学会委員で、懇親会を開催し、日ごろのダムに関する仕事等について、ざっくばらんに話合い、親交を深めました。
 懇親会終了時は、昨年に引き続き、ダム式万歳やダムLOVEポーズなどもお披露目し、昨年も本イベントに参加された学生は慣れた様子で万歳をしておりました。


【2日目:農作業手伝い】

 2日目の農作業手伝いでは、リンゴの摘果作業をさせていただきました。これは、果実が結実し始めたころに小さな果実を間引いて、果実の数や品質を調整する作業のことです。1つの果実に十分な栄養が行き渡るようにして大きく育て、品質を高めるために行われます。また、1つの枝に多くの実が生りすぎないよう、樹の負担軽減も目的としています。農家の方の説明を聞いて、学生だけでなく、先生、実行委員も、成長したリンゴの姿を想像しながら摘果作業を黙々とこなしていました。
炎天下の中の作業でしたが、休憩時にはリンゴジュースやアップルパイの差入れをいただいたりして、懇親を深めながら楽しく作業することができたと思います。
また、農家の方との意見交換の中で、ダムやため池の役割や水との関わりの重要さに改めて気がついたとの言葉もいただきました。
 終了時は、参加した学生達から一言ずつ感想をもらい、学生にとって良い経験をする場を与えることができたと感じました。また、各先生からは次年度もぜひ開催してほしいと依頼もあり、今年度も成功だったと思います。
 最後に、梅田委員から、本イベントの振り返りや御礼を含めた閉会挨拶がされ、本イベントは終了しました。


4.まとめ

 今回の交流会は、将来のダム技術者候補である8名の学生および2名の農業従事者に参加をいただき、無事終了することができました。参加者からいただいた感想文は本報文の最後に掲載いたします。
       
 今回、ダム見学、農作業体験を通じて、学生に日常では経験できない経験をしてもらうことができました。
 1日目のダム見学ではダム天端や、ダム堤体内において、設置されている機器類やゲートを身近で見てもらうことができ、これまで机上でしか学んでいなかった部分を補完することができたと思います。また、将来のダム技術者を目指す学生たちが積極的に質問をする姿も見られ、大変有意義な交流ができたと思います。
 2日目の農作業体験は炎天下の中での作業でしたが、普段食べている農作物の裏には、農家の方々のたくさんの苦労や努力が隠れていることを、身をもって学習することができたと思います。農家の方からも想像以上に作業が捗ったと、お褒めの言葉もいただきました。
 今回からは参加大学も増え、昨年から引き続き参加している学生もいることから、本イベントを通じて学生間で積極的に親睦を深めていたのも大きな収穫だったと思います。
       
 開催にあたりまして、国土交通省東北地方整備局 岩木川ダム統合管理事務所の皆様および、岩手大学農学部地域環境科学科 山本清仁先生、弘前大学農学生命科学部地域環境工学科 森洋先生、日本大学工学部土木工学科 梅田信先生、農業生産法人㈱グリーンファーム農家蔵 乗田和耶氏、駒井優子氏には、ご多忙にもかかわらず、事前準備から当日の説明や案内など多大なご協力とご配慮をいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

5.概要

<令和7年度「ダムとダム周辺農業の関わり
       ―ダム×周辺農業 交流会―」>


(1).開催日:令和7年6月27日(金)、28日(土)
(2).場所:ダム見学「津軽ダム」
       農業体験「青森県平川市」
(3).参加者:
   大学関係:11名(引率教員3名、学生8名)
   農業従事者:2名
   ダム工学会:4名(うち1名は引率教員も担う)
  

4. 行程 (4).プログラム


項 目 時 刻 内 容 備 考
 1日目:令和7年6月27日(金)
集合

13:00

岩木川ダム統合管理事務所
開会挨拶

13:05-13:10

開会挨拶 丹羽 尚人 氏
(活性化小委員会 委員)
講義1

13:10-13:40

津軽ダム概要説明など 五十嵐 悟 氏
岩木川ダム統合管理事務所
調査課長
講義2 13:40-14:10 ダム概論 丹羽 尚人 氏
(活性化小委員会 委員)
講義3

14:10-14:40

岩手大学農学部施設機能工学
研究室の研究活動の紹介
山本 清仁 氏
岩手大学農学部
地域環境科学科
ダム見学

14:50-16:40

津軽ダム見学
移動

16:50-17:50

弘前市内宿泊場所に移動  
懇親会

18:30-20:30

   
 2日目:令和7年6月28日(土)
集合 8:00 グリーンファーム農家蔵 集合  
移動 8:00-8:30 農作業概要説明  
農業体験 8:30-11:30 摘果作業手伝い  
片付けなど 11:30-11:40    
感想 11:40-11:55    
閉会挨拶 11:55-12:00   梅田 信 氏
日本大学工学部
土木工学科
(活性化小委員会 委員)
解散 12:00

6.写真

 

講義状況 津軽ダム見学状況1 
津軽ダム見学状況2  津軽ダムでの集合写真 
懇親会でのダム式万歳 農作業手伝い1
農作業手伝い2 農家の方との集合写真

7.参加者による感想文

●弘前大学 4年 平岡 修造

先ずは、ダム×農業交流会による学びの機会を与えて下さった皆様に、感謝申し上げたいと思います。今回のダム見学や農業体験では、普段入ることのできない場所を見学したり、リンゴの摘果作業を体験でき、大変貴重な経験をすることができました。

 今回は2回目の参加ということもあり、津軽ダムについての説明内容を前回見学した津軽川ダムとの違いを踏まえながら理解することができました。印象に残ったのは、津軽ダムが治水・利水・発電といった多目的ダムであることです。地域の安全を守るだけでなく、水資源や再生可能エネルギーの確保にも貢献している点に感銘を受けました。見学を通して、ダムは単なる「水をためる施設」ではなく、地域の暮らしを守り、自然と調和しながら未来へとつなぐ大切な施設であることを学びました。今後もこのような社会基盤に関心を持ち、学びを深めていきたいと思います。

 農作業体験では、炎天下の中、摘果作業を行い改めて農作業の大変さを実感することができました。また、一見地味に思える作業ですが、これによって一つひとつのりんごにしっかり栄養が行きわたり、形の整ったおいしいりんごが育つのだと知り、とても大切な工程であることを実感しました。実際に摘果してみると、どの実を残すべきか迷うことも多く、判断が難しく感じました。大きさだけでなく、実の向きや傷の有無、枝ぶりなど、さまざまな点に注意を払う必要があり、農家の方の技術と経験の重要さが良く分かりました。

 最後に、今回のダム×農業交流会はダムや農作業の重要性に興味を持つことができるとても良い機会であると共に、普段あまり関わることがない方々と交流することができる楽しい機会でした。2日間、大変お世話になりました。ありがとうございました。    

●弘前大学 4年 千葉 珠威

 今回は、津軽ダムと平川市にあるリンゴ畑で見学・体験をさせてもらった。ダムは普段生活をしていると、水が溜めてあるのだなとしか思わない人が数多くいると思うが、今回、ダムについて専門的な知識がある方々と見学をしたことで、過去、津軽ダム見学は3回目であったが、今までで一番詳しくなったと実感した。

 津軽ダムは用途が多く多目的ダムと呼ばれ、洪水調節・工業用水・灌漑用水・発電などを担っている。雪融け水や雨などによる洪水を防ぎ、また、降雨が少ない時には田畑が潤うよう、多くの地域の人々に有益をもたらす施設である。また、内部にも工夫が施されており、コンジットゲート部分に使われる鋼材の特性を生かしたコストカットも図っていた。

 リンゴ畑では少子高齢化による作業弊害もあり、現状の農家の課題により向き合えた。約3時間という短い時間ではあったが、暑さにより何倍にも感じた。温暖化が進む中、生産者の方々に改めて敬意と尊敬が増す機会になった。2日間、大変お世話になりました。         


●岩手大学 4年 酒井 勇太朗

 2日間にわたるダム見学会、農業体験と貴重な機会を作っていただきありがとうございます。これまでいくつかのダムを見学してきましたが、引張型のラジアルゲートを初めて見ました。引張型にするだけで同じ大きさでも材料費を削減できるのが面白いなと思いました。また国土交通省管轄のダムにおそらく初めて行ったので、エレベーターがついていたり監査廊内がきれいに保たれていることに驚きました。

 農業体験ではリンゴの栽培を初めて体験しました。畑作や稲作は実際に近くで見たり体験してきましたが、果樹は見る機会もなかったので貴重な体験ができました。樹というほどなのでもっと大きいものを想像していましたが、脚立のような足場を必要とせずに大体の作業を実施できる大きさで、家庭の庭でも栽培できそうな大きさであることに驚きました。また周りで特に防虫対策をしているようには見えませんでしたが、作業中に虫が見られることがほとんどなく不思議に思いました。農薬等薬剤を使用しているかと思いますが、実家の家庭菜園でトマトを育てたときは虫だらけだったので同じ外でここまで差が出るのかと思い面白かったです。

 今回は交流会ということで他大学の学生と交流もありました。次の日の朝が早かったため一晩中共にすることはありませんでしたが、有意義な時間を過ごせたと思います。この体験を来年以降の仕事に生かせて行けたらなと思います。本当に貴重な体験を提供していただきありがとうございました。

●岩手大学 4年 小岩 史苑

 今回の見学会では、1日目に津軽ダム、2日目にはグリーンファーム蔵さんの農作業のお手伝いをさせていただきました。今回訪れた津軽ダムは他のダムとは違い、ライトアップや周辺の整備がよくされており特に景観が良いダムだと感じました。また、清水バイパスや農業に適した水温の水を流す選択取水設備など、水質保全の設備が充実しており、ダムが農業に直結しているというその後のお話からも、水質保全対策の必要性がよく理解できました。プラムラインおよび監査廊の見学など含み、普通はできない貴重な経験をさせていただきありがとうございます。

 2日目の農業体験では、去年に引き続きリンゴの農作業を手伝わせていただきました。
 去年、果物の中でもリンゴがとても手間のかかるものだというお話を聞いていたのですが、今回の農作業でその話がとてもよく理解できました。リンゴだけにかかわらず、普段私たちの食卓に並ぶ農産物ひとつひとつに、大変な労力がかかっていると痛感でき、有意義な時間を過ごすことができたと思います。

 今回の見学を通してダムと農業、そして私たちの生活のつながりを深く理解することができました。大学を卒業し、就職した後もダムにかかわる機会があると思うので、その時には今回の見学会で得た知見がかならず役に立つと思いました。この度は見学会を企画してくださり、ありがとうございました。


●岩手大学 4年 二ツ森 ひなた

 今回の交流会を通じて、貴重な体験と新たな学びを得ることができました。

 1日目は津軽ダムの堤体内を見学させていただきました。これまで大学の授業で他のダムを何度か見学した経験はありましたが、津軽ダムの建設において目屋ダムを活用した経緯や工法など、事前講義や見学中に教えていただけた津軽ダムならではの情報により、深い興味を持って見学することができました。その後の懇親会では、他大学の方々と交流する機会を得ました。異なるバックグラウンドを持つ参加者と意見を交換することで新たな視点を得られ、今後の学びや活動への大きな刺激となりました。

 2日目にはりんごの摘果作業を体験させていただきました。実際に農作業に携わることで、りんご栽培の大変さを肌で感じることができました。卒業後に水資源管理に関わる仕事に就く予定の私にとって、農業に携わる方々への責任の重さを改めて実感する機会となり、将来の仕事に対する意識を一層高めることができました。

 この2日間の交流会で得た知識、体験、そして人とのつながりは、学業や将来の仕事において必ず活かせるものと確信し、参加できたことを心から嬉しく思います。このような貴重な機会を提供してくださり、本当にありがとうございました。
        

●日本大学 4年 塙 直樹

 今回のダム工学会への参加は、ダム見学や農業体験、そしてダム工学会の方々との交流を通じて、私にとって多くの新しい発見と刺激に満ちた時間となりました。

 参加する前は、ダムの役割の大部分は防災であり、単に水が増えたら放流するものだと漠然と考えていました。そのため、正直なところ、ダムに対してそれほど深い興味を抱いていませんでした。しかし、今回の講義を受けさせていただいたことで、その考えは大きく変わりました。

 講義では、治水、利水、そして環境というダムにおける三つの重要な意味、そしてダムの正しい運用方法や維持管理に至るまで、多岐にわたる知識を教えていただきました。ダムの運用には、水の量を単に調整するだけでなく、洪水対策、農業や生活への水の供給、さらには河川生態系への影響まで、様々な側面を考慮する必要があることを深く学びました。この講義を通じて、物事を多面的な視点から捉えることの重要性を感じました。

 また、ダムが作られる理由が同じであっても同じダムはなく、その土地の条件に応じて、ダムのプロたちの工夫が詰まっている最高傑作だと感じました。これは、私がダムについての知識が少なかったからこそ、強く思いました。

 最後に、普段はお話する機会が少ない他大学の方や、企業の方のお話はどれも実体験からくるものが多く私の凝り固まった頭に良い刺激になりました。そして何より楽しかったです。 今回の貴重な機会を与えてくださり、また、関わってくださった皆様に心から感謝申し上げます。

●日本大学 4年 池田 盛隆

 私は、ダムにプライベートで訪れるほど好きである。農業は触れたことがなかったが、とても楽しみだった。

 1日目は津軽ダムの説明と堤体や内部の見学を行った。津軽ダムは6つの目的を持つ多目的ダムであり、灌漑用水の補給も行っている。ダム内部の監査廊を歩き、基礎排水孔やプラムラインの説明を聞いた。揚圧力やたわみを計測するためにあると知った。今回、初めてダムの内部に入ることができ、楽しく学ぶことが出来た。私は将来、ダムに関わる職業に就きたいと考えており、説明や見学で学んだことを活かしたい。

 2日目はりんご農園で農業体験をした。元々、農業は大変なイメージがあった。実際作業を行ってみると、農園が広く大変だったが、それ以上に皆さんと協力して作業が出来て、とても楽しかった。今後、りんごが成長していくのを自分の目で確認したいと感じた。農業は一つ一つ丁寧な作業によって、農作物を育てているのだと知った。またダムの目的の一つである、灌漑用水の補給によって、農作物に水を与え育てていると知った。

 今回、津軽ダムの説明や見学、りんごの農業体験に参加することが出来たこと、学生の皆さんと仲良くなれて良かった。今回の経験で、よりダムに関わる職業に就きたいと思った。
 

●日本大学 4年 永元 悠太

 今回、「ダムとダム周辺農業交流会」に参加し、津軽ダムの見学と農業体験を通じて多くの学びを得ることができました。はじめに津軽ダムの目的や利用、構造、歴史についての講義を受け、治水・利水・発電といった多様な役割を果たすダムの重要性を改めて実感しました。講義後、実際に津軽ダムを見学し、巨大な重力式コンクリートダムの迫力や普段見ることのない場所を見学できダムの魅力を肌で感じました。

 さらに、りんご農家での農業体験を通じて、ダムからの水がいかに農業に欠かせないかを実感しました。水管理の難しさや気候変動の影響、果樹を育てる作業の大変さを体験することで、農業の厳しさとともに、地域社会とダムが密接に関わっていることを学びました。また、他大学の学生との意見交換もあり、さまざまな視点からダムと農業の関わりを考える良い機会となりました。

 今回の体験を通じて、インフラ整備が地域の農業や暮らしを支えていることを肌で感じ、今後の学びや将来の仕事に活かしていきたいと強く思いました。
        

        

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