ダム工学会　活性化推進小委員会
中国四国地区部会事務局

　中国四国地区部会では平成19年11月30日に香川県の香川用水調整池(傾斜遮水ゾーン型フィルダム、H=25m)、豊稔池(マルティプルアーチダム、H=30.4m)において現場見学会ならびに講演会を開催いたしました。
　午前中に開催した講演会では、(独)水資源機構吉野川局の杉村淑人局長より「吉野川の治水・利水の現状と課題」と題して、香川用水などの四国における水資源開発事業の目的や効果、吉野川や四国が抱える水に関する様々な課題について、最近の気候変動による洪水や渇水の頻発などの事例を交えてご講演頂きました。また、香川用水土地改良区の長町博相談役からは「豊稔池の築造」と題して、豊稔池が建設された大正末期から昭和初期の時代背景、地質的要因による重力式ダムからマルティプルアーチダムへの型式変更の経緯、施工時の様子などについて当時の貴重な写真などを交えてご講演頂きました。
　いずれの講演も、古くから水不足に苦しみ、闘ってきた讃岐平野の人々の水を得るための苦労や工夫にまつわるお話であり、蛇口をひねればいつでも清潔な水が出る生活のありがたさを再認識させられる大変貴重なお話でした。
　講演会場で香川用水の事業概要及び香川用水調整池の工事概要をお聞きした後、香川用水調整池工事現場へ移動しました。現場を一望できる見晴台で工事の概要・進捗状況等の説明を受けた後、場内へ移動し、貯水容量を確保するための池内掘削の様子や堤体の盛立状況を見学しました。現場では盛立材料の品質管理方法について質問する様子や、盛立材料を直接手に取って感触を確かめる学生の姿も見られました。
　昼食後、香川用水記念公園で用水路や沈砂池などの構造物、水の資料館を見学した後、豊稔池へ移動しました。豊稔池ではダム下流側の公園で平成6年に完了した堤体補強工事の目的や施工方法などの説明を受けた後、ダム周辺を見学しました。バットレスとアーチを組み合わせた美しい石積み堤体を目の当たりにし、先人の知恵と工夫を賞賛する声が多くあがっていました。
　講演会、見学会ともに盛りだくさんの内容であり、早朝から夕方まであわただしい一日でしたが、天候にも恵まれ、ほぼ予定通りの行程で見学会を終了することができました。
　参加者も当初の予定を大幅に上回る74名と盛況でした。また、今回は教育機関からの参加者が多く、地元の高松高専に加えて、愛媛大学、徳島大学、遠くは岡山大学からも大勢参加頂きました。
　見学会の開催に当たっては、(独)水資源機構吉野川局・香川用水総合事業所、香川県西讃土地改良事務所、香川用水土地改良区の関係者の方々には多大なご協力を賜りました。また、香川用水調整池工事現場においても大成建設・鹿島建設JVの皆様には車両の誘導や安全確保などにご協力頂きました。ここに厚く御礼申し上げます。

１.開催期日：平成19年11月30日（金）

２.見学場所：香川用水調整池、香川用水記念公園　水の資料館、豊稔池

３.講演会場：琴平パークホテル

４.参加人数：参加　74名（講演会のみの参加者、事務局含む）

５.見学会 及び講演会の内容

６．状況写真

岡山大学 阪田教授（ダム工学会副会長）による開会挨拶

ご講演を頂いた(独)水資源機構 吉野川局 杉村淑人局長

ご講演を頂いた香川用水土地改良区 長町博相談役

(独)水資源機構 香川用水総合事業所 後藤恭央副所長による事業概要説明

(独)水資源機構 香川用水総合事業所 八木浩敦工事課長による現場説明

香川用水調整池 30tタンピングローラによる転圧後の盛立面

香川用水記念公園　河川横断部の水路橋を渡る見学者

水の記念館　香川用水に関する学習ビデオの上映を行なった

香川県西讃土地改良事務所 下河賢禎副主幹による豊稔池堤体補修工事概要説明

非かんがい期のため抜水中の豊稔池と紅葉に色づく湖畔の様子

豊稔池堤体をバックに集合写真