ダム工学会
 
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行事報告

☆ 志津見ダム見学記 ☆

 

 

はじめに
 ダム工学会の第32回現地見学会が岡山大学大学院教授の阪田憲次団長(ダム工学会副会長)のもと、7月5日から6日の2日間にわたり開催されました。今回の現地見学会は国土交通省中国地方整備局が建設中の尾原ダムと志津見ダムの2箇所を見学しました、ここでは2日目に見学した志津見ダムについて報告致します。


1.志津見ダムの概要

 志津見ダムは堤高85.5m、堤頂長266m、堤体積432,000m3の重力式コンクリートダムであり、拡張レヤ工法で施工しています。
 コンクリートは2基のタワークレーン(13.5t、15t)を用いて(写真-1参照)、減勢工については150tクローラクレーンを用いて、運搬・打設しています。タワークレーンのサービスエリア外については、堤体内ではクローラダンプ、減勢工へはバケット移動台車による運搬を実施しています(写真-2参照)。


写真-1
 

写真-2
 志津見ダムの特徴として、
① 空気によって止水を行う新しいタイプの連続サイフォン式取水設備を採用していること(図-1、写真-3参照)、
② 天端橋梁を廃止し、堤頂構造の簡素化による工期短縮やコスト縮減を図っていること(図-2参照)、
③ ダムサイト左岸の付替国道184号線の開削工事の岩掘削材を骨材の原石として流用していることなどが挙げられます。
 
図-1

写真-3

図-2
 
 骨材製造設備の設置標高は原石採取場跡のダム天端より高い場所に設置しています。このことは次に述べる平成18年豪雨による、骨材製造設備の被災を最小限にする大きな要因となったと思います。このことから施工管理面におけるリスクマネージメントの大切さを改めて痛感しました。

 

2.平成18年豪雨について
 平成18年7月18日に出雲地方に大雨(40年に1回の大雨)が降り、ダムサイト周辺が800㎥/sの大洪水に襲われました。仮排水路トンネルの設計対象流量(5年に1回確率)を超える洪水であったため、結果的に約6万m3という大量の土砂が河床に堆積しました。この被災により工事の遅れは当初6ヶ月と予想されていましたが、工事関係者の方々の努力により4ヶ月の遅れに留まったということです。
 当時の水害状況写真で凄まじい状況を目の当たりにし、工事再開までのJV職員、作業員の方々のご苦労を窺い知ることができました。特に河床に仮置きしていた骨材原石の大半が流出し、その一つ一つを選別・集積するという気の遠くなるような作業をやり遂げたという苦労話も聞かせていただき、皆さんの努力には本当に頭が下がる思いがしました。

 

3.合理化施工とVE案の紹介
 工事概要説明の後、ダムサイト左岸の展望台で当日の作業内容等について説明を受けた後、堤体に入り減勢工のコンクリート打設等の見学を行いました。減勢工のコンクリート運搬は当初はダンプ直送だったそうですが、この計画では約5kmの距離を運搬する必要があり、運搬時間を短縮する方法としてバケット移動台車方式に変えたということでした。
 また、監査廊に水平プレキャスト材を採用していること(写真-4参照)、現場発生伐採材を利用した防音壁など、数多くのVE提案が随所にみられ、大変参考になりました。
 現場から再び共同企業体事務所に戻り、活発な質疑応答がおこなわれましたが、この時のやりとりから、ダム技術者のダム工事に対する意欲が決して衰えてはいないことを確認できまして、小生もさらなる研鑽を積もうと心に決めた次第です。


おわりに
 最後に本見学会でご説明、ご案内頂きました中国地方整備局ダム出張所ならびに本体工事の各共同企業体の関係各位、またこの見学会を段取りして頂いたダム工学会の幹事、事務局の方々に厚く御礼申し上げます。

[三井住友建設㈱ 木元 敏徳]

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