一般社団法人ダム工学会
 
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☆ 黒部ダム・黒四発電所見学記

 

 ゴットン・・・。トロッコ列車(黒部峡谷鉄道)が「宇奈月」駅を出発した。今日は見学会の第2日目、宇奈月から黒部ルートで扇沢までのメインイベントである。昨夜の富山の銘酒がまだ少し利いているような気もするが、空は快晴、周囲の山々は紅葉の真っ盛りで申し分のない条件が整っている。

 松本団長をはじめとするB班一行14名は、関西電力竃k陸支社の 林 チーフマネージャーの先導でまずは欅平までの列車の旅を楽しんだ。途中、出し平ダムを車中より見学、昨日の宇奈月ダムとの連携排砂について再確認した。終点欅平駅からは一般観光客は立ち入り禁止、坑内を少し歩いて竪坑下部に到着、ここからエレベーターで一気に200m上昇して欅平上部駅に着いた。さらに上部専用鉄道で黒部川第四発電所向かった。この黒部ルートは黒部川第三発電所建設のために昭和11年に建設が始められたとのことであったが、よくまあこのような大胆な計画を立案し実現されたものと、同じ土木技術者として先達に対して畏敬の念を新たにした。途中通過した有名な高熱地帯では今なお40℃の高温で、硫黄のにおいと共に165℃に達したといわれる当時の難工事が偲ばれた。発電所直前の鉄橋上で一時停止して紅葉の山々を背景にした仙人谷ダムの優雅な姿に接し、ここでも先人達の苦労に思いを馳せた。


 黒部川第四発電所では黒部川電力システムセンターの 水島 マネージャーの出迎えを受け、同氏の名調子の説明で発電所内を案内して戴いた。たまたま点検期間中とのことで発電機は停止していたが、おかげでおそらく普段は見られないであろう高圧鉄管路を間近に見学できたことは幸いであった。発電所を出てインクラインに乗り456mを駆け上って黒部トンネル下口に到着、さらにトンネル内をバスで通り抜けていよいよ黒部ダムに近づいた。
 バスを下車してトンネル内を少し歩くと、突然目の前に雪を頂いた立山連峰の眺望が開けた。手前には青々と水を湛えた黒部湖、そして黒部ダムの雄姿が我々を出迎えてくれたのである。思わず駆け寄る見学メンバーの面々。観光客も多く、あちこちでシャッターを切る音が聞こえる。ここでA班の一行としばし合流、合同で記念写真を撮った後、我々はダム管理所の一室を拝借して昼食を摂った。
 慰霊碑に黙祷を捧げた後、まずロックテストチャンバーに案内して戴いた。これはアーチダムアバット上部の基礎岩盤の強度を確認するための現位置岩盤試験で、世界でも類を見ない試験だったとのことである。筆者は何度か黒部ダムを訪れているがこれを拝見するのは初めてで、その規模、複雑さからも当時の技術者の執念と苦労が推察された。さらに堤内監査廊を通って下流のキャットウォークに案内して戴いた。放流期間は済んでいたので壮大な放水状況は見られなかったが、堤体下流から見上げるアーチダムの偉容を堪能した。

 右岸上部の展望台からのダムの全容を楽しんだ後少し時間があったので、左岸天端へ廻り、ケーブルカーを利用して「黒部平」へ、さらにゴンドラで「大観峰」まで足を延ばした。時間の関係でゆっくりはできなかったが、目前の立山連峰、黒部湖を挟んで対岸に広がる雪化粧の後立山連峰が、青空と紅葉と一体となって誠に絶景であった。このような風景の中にあってはさすがの黒部ダムも一点景となり、大自然の偉大さを改めて痛感させられた。
 再び黒部ダムに戻ってトロリーバスに乗り、先人が破砕帯と命懸けで戦った大町トンネルをあっという間に通り抜けて扇沢に着いた。見学会の第2日目もそろそろ終わりである。宿舎の「扇沢ロッジ」では「黒部プロジェクト」のDVDを全員で視聴し感激を新たにしたが、その折、宿のご主人より「どうです。これだけのことが今の皆さんにできるでしょうか?」との問いかけがあった。こちらも技術者の端くれ、「もちろん・・・」と反論しかけたが、いやまてよ、このご主人はこの黒部プロジェクトを誇りに思い、我々をこの地で迎えることに天命を感じておられるのではないか・・・と思い直して言葉を呑んだ。心の底で「本当にできるかなぁ〜?」との忸怩たる思いを秘めながら・・・・・。


 今回の見学会は今までと多少趣が異なり、建設中の現場ではなく既設のダムを巡る企画であった。「ダム不要論」がかまびすしい昨今、将来必ずやダムの必要性が再認識されるであろうことを確信する者にとっては、先人から引き継がれた至高の技術を後世に伝えるための貴重な体験をさせて戴いた。今回の企画に当たられた関係者の皆様、とくに、随所に名峰を含む絶景を観賞できるような粋なスケジュールを組んで戴いた現地の方々に厚く御礼申し上げて筆を置く。

[潟Aイ・エヌ・エー  田中 雄作]

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