一般社団法人ダム工学会
 
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第22回現地見学会 二ツ石ダム見学記

 

 ダム工学会主催の第22回ダム現地見学会の第2日目に見学した二ツ石ダムについて報告します。

 二ツ石ダムは、宮城県の北部に位置し、一級河川北上川支川鳴瀬川の上流二ツ石川の宮城県加美郡宮崎町宮崎字北地内に建設中の中央コア型ロックフィルダムです。事業主体は東北農政局大崎農業水利事務所、施工者は佐藤工業・西松建設・三井建設特定建設工事共同企業体で建設中のダムです。
 昭和59年から調査着手し、平成3年に建設工事に着工し、現在堤体の盛立工事中で,平成18年に工事完了を予定しています。
 

<ダムの諸元>
型   式 中央遮水ゾーン型ロックフィルダム
堤   高 70.5m
堤 頂 長 439.0m
堤 体 積 2,197,000m3
上流面勾配 1:3.0
下流面勾配 1:2.1
集 水 面 積 19.1km2
総貯水容量 10,600,000m3
有効貯水容量 9,700,000m3

 

左岸側から堤体右岸を望む

 

ブレンドヤード

 

 二ツ石ダムの設計、施工上の特徴は以下のとおりです。

 

(1)設計上の特徴

 基礎地盤が軟岩であることを考慮して、最大断面における遮水ゾーンの幅を貯水深と同じだけ確保している。

 石山より採取する岩石は耐久性に乏しいため、表面保護のリップラップ材は近傍より購入している。

 遮水材料はダム近傍から採取したローム材に原石山から発生する風化流紋岩をブレンドすることにより,力学物性を改善し廃棄岩の利活用してコスト縮減を図っている。

 原石山の採取場所変更による賦存量の見直しを行った結果、ゾーン3(流紋岩;Ry、RYS)の発生割合が少ないため、新たにゾーン2を設け、必要安全率1.2を下回らない範囲で内法勾配(上流側1:1.6、下流側1:1.8)をできるだけ緩くしている。

 基礎地盤の下部(15m以下)に難透水層(凝灰岩;Ytf1層)が10〜20mの層厚で分布しており、この難透水層による遮水効果を期待して、カーテングラウチングの深度をYtf1層までとした。(最大断面でカーテン深度は15m程度と短い)

 

(2)施工上の特徴

 工事用道路は既設の林道を拡幅した道路のため盛立てに重ダンプが使用できず、すべて10tダンプを使用している。(堤体〜原石山 L=11.0km、最盛期の10tダンプ台数は約150台)  ゾーン4材(リップラップ材)とフィルター材は、大滝山、小栗山(運搬距離約30km)の各原石山より運搬している。材料の使用時期と1日の運搬台数の規制から各ストックヤードに仮置きしている。

 ダムの基礎岩盤は、新第三紀中新世魚取沼層の凝灰岩類の基盤でゾーン1及び構造物の着岩部は養生マットを敷いてスレーキング防止に努めている。

 ダムサイト近傍にストックヤードやストックパイルとして利用できる仮設ヤードが少なく、川の切り回しや、谷を埋め戻してヤードを造成してエリアを確保している。

 洪水吐きの急流部の揚重仮設備として、2.8t×8.5mのインクラインを計画している。

 原石山のゾーン3材の腑存量が少ないことから、ゾーン2材の粒度や比重など各種試験を実施し、ゾーン3材へ流用し材料の有効利用に努めている。

 

二ツ石ダムのすがた

 

 以上のように、現地状況に合わせて様々な工夫やコスト縮減方法が実施されており、勉強になりました。なかでも遮水層でカーテンをとめる基礎処理のコスト縮減策は、最近の考え方がすでに実践されているので感心しました。

 また、当日は雨が降っていたため、盛立の作業状況がみられなかったことが残念でした。

 最後になりましたが、東北整備局胆沢ダム工事事務所、岩手県大船渡地方振興局鷹生ダム建設事務所、東北農政局大崎水利事業所並びに各共同企業体の皆様、柳澤先生をはじめダム見学会小委員会の皆様に深く感謝し御礼申し上げます。

[(株)ニュージェック 大野健一]
 

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