一般社団法人ダム工学会
 
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第16回現地見学会 滝里ダム・桂沢ダム見学記

 

 若芽生える森林の向こうの青空に、十勝岳の稜線がくっきり浮かぶ。見学会は、初夏を感じる爽やかな朝の風の中、十勝岳連峰を背に2日目の目的地滝里ダムへ向かった。

 滝里ダムは、石狩川最大の支川である空知川に建設する建設省直轄多目的ダムである。工事は本体工事を平成9年度に完了し、試験湛水を本年3月1日より開始した。4月21日にサーチャージ水位、5月24日最低水位に到達し、ダム、貯水池とも異常ないことが確認され試験湛水を終了したばかりである。

 ダム及び貯水池の主要諸元は次のとおりである。

 

滝里ダム諸元

型 式 重力式コンクリートダム
堤 高 50.0m
堤頂長 445.0m
堤体積 455,000m3
流域面積 1,662km2
湛水面積 6.8km2
総貯水容量 108,000,000m3
有効貯水容量 85,000,000m3

 

 

 一行は、貯水池上流端の市民ゴルフ場から、延長約14kmに及ぶ長い貯水池を見わたしながらダム左岸側にあるダム管理所へ向かった。管理所にて滝里ダム建設事業所水野所長及び各位からダムの概要説明を伺い、その後管理所内、監査廊内を見学した。

 ダムは次の特徴を有する。新技術の開発とともに、地域を大事にしているのを感じる。

@ダム流域は空知川流域面積の約2/3を占め大きい。A国道約16km、JR線約10kmなど補償規模が大きく、事業費の約42%を占める。B貯水池内には縄文時代の文化財が埋蔵され、13万m2を10年間発掘調査。C維持流量9m3/sを利用して管理用水力発電(2,400kw)を行い、ロードヒーティングなどのダム管理に利用。D国内で初めてコンクリート運搬にパイプベルトコンベヤを使用したRCD工法を採用。また、水質保全のため発電取水は選択取水とし、貯水池内4ヶ所で曝気を行うという。

 滝里ダムのある芦別市は、空気が澄んでいるため日本で最も星が美しく見え、星のふる里といわれる。ダム湖は、そのような環境に相応しく美しく静かな自然湖を感じさせる。これは水際まで緑豊富な森林が残っているからであろうか。緑と青空が湖に映える。滝里ダムは、環境への配慮とともに、地域住民が参加できる工夫を施している。管理所は一般開放しガラス越しに管理状態が見られる。貯水池末端のゴルフ場は貯水池環境整備事業にて整備され、運営・管理は周辺自治体が実施している。試験湛水中14日間水没したというが、水没による芝への影響はなく広々とした緑の絨毯であった。その整備は水没者などが関与したという。短時間の見学であるが、滝里ダムが地域に認知され住民に愛されているのがわかる。いつの日か、湖一杯に星が降る滝里ダムを見たいと思う。

 

 滝里ダム見学後は、桂沢ダムへ向かった。
 桂沢ダムは、石狩川水系幾春別川に昭和32年竣工した重力式コンクリートダムで、北海道初の多目的ダムである。桂沢湖は四季を通じてたくさんの人々に親しまれ、賑わっているという。現在、この桂沢ダムを12.4m嵩上げして「新桂沢ダム」を建設する再開発と、幾春別川支流の奔別川に重力式コンクリートダムにて「三笠ぽんべつダム」(ダム高78m)を新設する、2ダム1事業からなる幾春別川総合開発事業が進められている。
 現場見学会は、桂沢湖に隣接するレストハウスにて幾春別川ダム建設事業所元永所長から両ダムの概要説明を伺い、既設桂沢ダムを見学した。
新桂沢ダムの諸元は次のとおりである。

 

新桂沢ダム諸元

型 式 重力式コンクリートダム
堤 高 76.0m(現ダム63.6m)
堤頂長 415.0m(現ダム334m)
流域面積 298.7km2(直接151.2km2
総貯水容量 147,300千m3(現ダム92,700千m3
有効貯水容量 136,400千m3(現ダム81,800千m3

 

 

 桂沢ダムは、竣工後40年経て、周辺自然環境に同化した安心感のあるダムである。しかし建設当時は我国のダムの技術基準は未確立で、手探りに技術理論を展開したと推察するが、現在でも同様な形状になると思うほど、当時の技術の確かさと技術者の意識の高さを感じる。新桂沢ダムとする嵩上げは、既設ダムと同軸にて、現有機能を維持しながら行う計画という。さらなる高度な経験と知恵による技術が要求されるであろう。新桂沢ダムが、既設桂沢ダムと同様に住民に愛されるダムになることと信じる。

 2日間にわたり現在建設中の忠別ダム、湛水直後の滝里ダム、戦後から立ち直りつつある昭和32年に建設し、さらに再開発計画のある桂沢ダムと駆け足で見学した。社会的要請を反映してダムの立地条件が変遷し、それに適合するダム技術の進歩と地域・環境の重要性を垣間見た。また、見学会を通じて様々な人と話しができたことは、今後の私の大きな財産である。

 

 最後に、多忙な折り、ご説明とご案内を頂いた北海道開発局、忠別ダム建設事業所、滝里ダム建設事業所、幾春別川ダム建設事業所の皆様、忠別ダム及び滝里ダム建設JVの方々、黒田団長、当見学会を企画案内頂いた現地見学会小委員会の各位に深く感謝いたします。ありがとうございました。

 

 

[日本工営(株) 木村 誠一]

 

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