一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

令和3年度 ダム工学会
研究発表会、特別講演会、講習会の開催報告


『研究発表会の部』

ダム工学会学術研究発表会小委員会

  令和3年11月18日(木)に「令和3年度 ダム工学会 研究発表会」を開催しました。
 本年度の研究発表会は、昨年度と同様、特別講演会と同日に、新型コロナウイルス感染症拡大防止のために発表、審査、聴講をいずれもオンラインで開催しました。発表者は4名、聴講者は約60名でした。

 研究発表会では、ダム利用実態調査に関する研究1編、水質解析に関する研究1編、地震記録分析に関する研究1編、降雨予測に関する研究1編の計4編の発表がありました。

 発表論文の概要は以下のとおりです(敬称略)。

1.「ダムの来訪者やその利用実態に関する調査の高度化に向けて」

西日本技術開発株式会社 河川部   最上 友香子

近年、携帯端末の普及や通信技術の発達とともに、その位置情報取得や空間的な統計処理の技術開発が進み、空間・時間を連続的に捉えた人の流動状況の把握が可能となってきている。本研究では、ダムの来訪者等の調査について、ダム湖利用実態調査等における既存手法と新技術による手法の比較や、人流ビッグデータを活用した試行分析を行った。

2.「JWAモデルの改良とそのモデルを用いた川上ダム浅層曝気循環設備の配置・運用計画の検討」

独立行政法人水資源機構 木津川ダム総合管理所 管理課長  村田 裕

本研究では、ダム貯水池水質予測精度向上を目的として,既存の水質解析モデルに付随する浅層曝気循環設備による循環流等を計算するためのサブプログラムの改良、およびそれを用いて建設段階のダムにおける浅層曝気循環設備の効果的な配置計画と効率的な運用計画案の検討を行った。

3.「ダム天端で観測された地震記録の教師なし機械学習による異常検知に関する検討」

国土交通省国土技術政策総合研究所 河川研究部
 大規模河川構造物研究室 交流研究員

傅 斌

本研究では,ダムで取得される地震記録のうち,堤体応答が反映される上部(天端)での観測記録をもとに,ダムの固有振動数の変化をできるだけ精度よくかつ見逃すことなく検知することにより地震後の安全点検に役立てることを目的として,教師なし機械学習の手法を活用した異常検知の適用性について検討した。

4.「効率的なダム運用を目的とした15日間アンサンブル降雨予測の活用可能性検討」

   一般財団法人日本気象協会 社会・防災事業部 技師
木谷 和大

本研究では,ECMWF(ヨーロッパ中期予報センター)のアンサンブル降雨予測を用い、わが国の 55ダム流域を俯瞰的に眺めた場合の予測特性について解析を行い,洪水前の水位低下のより効果的な実施や無効放流の削減という観点から、効率的なダム運用を目的とした 15 日間アンサンブル降雨予測の活用可能性について検討した。

発表論文は、今後、ダムの安全管理、洪水調節、環境モニタリング等に寄与するものと期 待されます。

4編の研究発表に対して、優秀発表賞選考委員会による審査が行われ、優秀発表賞として次の1編が選定され、優秀発表賞選考委員会 乗京委員長より発表されました。受賞者には、後日、賞状ならびに副賞が郵送されました。

【優秀発表賞】

「効率的なダム運用を目的とした15日間アンサンブル降雨予測の活用可能性検討」

一般財団法人日本気象協会 社会・防災事業部 技師    木谷 和大

ダム工学会 小長井会長による開会挨拶 西日本技術開発
最上氏による発表
水資源機構 村田氏による発表 国土技術政策総合研究所
傅氏による発表
日本気象協会 木谷氏による発表 優秀発表賞選考委員会
乗京委員長による
優秀発表賞の発表、閉会挨拶
研究発表会開催報告
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『特別講演会の部』

ダム工学会学術研究発表会小委員会

 令和3年11月18日(木)の午後、第31回特別講演会が開催されました。
 特別講演会は、令和元年度までは5月の通常総会後に開催されていましたが、昨年度は新型コロナウイルス感染症拡大のため開催が延期となり、11月の研究発表会と同日にオンラインで開催されました。今年度も、昨年度と同様、研究発表会と同日の午後、オンラインで開催されました。
 今回の講師は、ダム工学会調査研究委員会委員長の京都大学防災研究所 角教授にお願いしました。

 角教授のご専門は、ダム工学、水資源工学、総合土砂管理などで、ダムの操作に関する研究も進められています。また、ダム等に関する様々な委員会にも数多く携わっておられます。
  今回の講演では、昨年度に引き続き、「大規模洪水に対するダム工学会貢献」と題して、角教授が座長を務める大規模洪水対策WGの活動内容についてお話し頂きました。

京都大学防災研究所 角教授
「大規模洪水に対するダム工学会貢献(大規模洪水対策WG)」

1.背景と検討方針

 ・ダム大規模洪水対策WGの設立の背景;異常洪水防災操作の多発などによりダムに関する社会の関心が高まっている。ダム工学会として、可能であれば土木学会など各種学会等とも情報交換・連携し、積極的に発信を行っていくことが求められている。

 ・検討方針として「ダム効果の情報発信」と「事前放流」の2点に着目、ダム工学会の提言としてとりまとめ、公表する。

2.ダム効果の即時的かつ効果的な情報発信について

 ・通達「出水後の速報作成に当たっての留意事項について」(H30.6.1国土交通省水管理・国土保全局)では、河川整備の効果の算出・公表を効率的に進めるための方法として、以下の点が示されている。

(1) 出水後速やかに(遅くとも3日以内)に対応する。
(2) 事業効果の算出・公表の進め方(案)
(3) 事前効果の算出・公表に当たっての事前準備(案)

 ・R2.7豪雨(最上川、筑後川)、R3.7豪雨(鶴田ダム、川内川)及びR3.8豪雨(土師ダム)における情報発信状況を収集、整理し、情報発信の改善提案を行う。

3.ダム事前放流の効果的実施

 ・事前放流の事例分析(2019年台風第19号、2020年7月豪雨、2020年台風第10号、2021年8月の豪雨)を行い、以下のような事前放流の効果を高める工夫が行われた事例を把握した。
  ・予備放流を行った後さらに事前放流を実施
  ・複数のピーク雨量に対応するため後期放流量を増加させるただし書き操作実施
  ・予め貯水位を低下することによる容量確保

 ・事前放流に関する課題認識として、河川整備状況を踏まえた事前放流の位置づけ、河川整備の進捗を踏まえたダム操作規則の見直し(一庫ダム)、事前放流を効果的に実施するための技術開発(アンサンブル予報の活用;木津川各ダム、新成羽川ダム)、利水機能の増進や環境保全に対する寄与、弾力的管理による活用水位からの事前放流(真名川ダム)、貯水位低下時の土砂移動や濁水発生の評価(金山ダム、大野ダム)等について検討を進めた。

 ・事前放流を効果的に実施するため、以下を骨子とする提言を作成する。

(1) 流域の河川整備状況をふまえた事前放流の実施
(2) 事前放流を効果的に実施するための技術開発
(3) 利水機能の増進、環境保全に対する寄与

 このように、角教授には、近年の大規模洪水等の実績を踏まえ、いまダムに求められている大きな課題である「情報発信」と「事前放流」に関して、広範な視点から最新の知見を丁寧にお話し頂きました。ダム管理者やダムに関わる技術者、あるいは河川防災の関係者にとって有意義な講演であったと思います。

 最後に、ご多忙な中、資料を準備し講演して頂いた角教授に深く感謝いたします。
京都大学防災研究所 角教授による講演
研究発表会開催報告
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『講習会の部』

ダム工学会講習会小委員会

 講習会小委員会では、毎年ダム工学だけでなく様々な分野の講師をお招きして講演を実施しています。本年は2名の講師を御招きし、ダム管理における取り組みについて、ダム用PSアンカーの設計施工について講演していただきました。

『ダム管理における最近の取り組みについて』

国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課
流水管理室長
津森 貴行様

『「ダム用PSアンカー設計施工マニュアル」の骨子』

一般財団法人 ダム技術センター 研究第一部 部長
川崎 秀明様

津森 貴行講師からは、先ず「既存ダムの洪水調節機能の強化(事前放流)について」として、利水ダムを管理する関係省庁と連携した枠組みについて説明がありました。東日本豪雨以前は約60ダムであった枠組みが、本年には1,434ダムまで広がっていること、昨年より「事前放流」を実施していることを紹介いただきました。また昨年質問のあった利水ダムにおける事前放流の河川法上の解釈について、河川管理者による河川の管理の一環として治水協定に基づき利水ダム管理者に実施を求めるものであることの説明がありました。公共放送の番組において、木曽川水系で2年連続連携して治水に効果のあったダム運用の取り組みについて取り上げられたことも紹介されました。
  次にダムの洪水調節に関する検討会におけるとりまとめとして、緊急性が伝わることための用語の使用や、情報提供の改善、伝わるために普段から繰り返し説明することの重要性について説明がありました。
  最後に今後の治水対策として、流域治水、AIを活用したダム運用の研究開発、未利用の水力エネルギーの活用推進について、説明がありました。

 川崎 秀明講師からは、本年9月に発行された「ダム用PSアンカー設計施工マニュアル」に関して、海外における技術の発展史として1934年にアルジェリアのシェファーダムの堤体補強で適用されたのが最初であること、国内においても1957年に藤原ダムの副ダムで用いられたが、その後は岩盤PSアンカーが主であったこと、最近の事例として川俣ダムにおける岩盤PSアンカーの更新、千本ダムにおける国内初となる堤体PSアンカーの適用ついて説明がありました。
  次にマニュアルの骨子として、ソイルアンカーとロックアンカーの考え方の違い、海外と国内におけるアンカーに求めるプレストレスの意識の違い、必要な補強に対するPSアンカーの適用事例について、具体的なダムの事例も含めて紹介がありました。今後本マニュアルのWEB講習会を実施し広く設計施工知識の普及を図る予定であることから、聴講者への参加の呼びかけがありました。

  今回の2名の講師のお話を通して、ダムにおける最新の話題を知る良い機会となりました。またこのような機会をより多くの皆様に提供するためにも、産官学が参加するダム工学会の本会が、情報や意見交換の場として活用されるよう努めていくつもりです。

津森講師によるオンライン講義と質疑
川崎講師によるオンライン講義
講習会開催報告
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