一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

平成24年度 ダム工学会 研究発表会・講習会の開催報告

 

ダム工学会 学術研究発表会小委員会
講習会小委員会

 

 平成24年11月22日(木)に都内、星陵会館において平成24年度 ダム工学会 研究発表会・講習会を開催しました。発表会には80名の参加者を得て、午前部の研究発表会では、6編の研究論文の発表と質疑応答が活発に行われました。午後部の講習会では、3名の講師による講演を行いました。 


『研究発表会の部』

  発表論文は別紙に示したとおりで、環境(水質)2編、耐震に関する解析4編の研究発表が行われました。

◆環境(水質)は
@草木ダムの下流水道事業者においてピコプランクトンによる浄化処理障害が確認されてから監視を行なっているピコプランクトンについて、栄養塩濃度との関係の整理結果と、曝気循環施設運転による対策に関する発表

Aダム貯水池におけるカビ臭現象の原因と考えられている藍藻綱ユレモ目によるメカニズムの解明と有効な対策を確立するためには、新たな分類同定手法の開発が重要となるため、今回、実際のサンプルを用いた新たな分類同定手法の検討や現場への適用の可能性等について

以上の発表があった。
 これらの研究は水道原水の改善に役立つ技術であり、実用化に向けたさらなる技術開発が望まれます。

◆岩手・宮城内陸地震等を契機として、ダムの耐震に関する研究が盛んになっています。今回は
@2011年4月11日福島県浜通りの地震(M7.0)において強震動を受けた重力式コンクリートダム門柱の地震観測記録を用いた地震応答解析

A嵩上げ重力式コンクリートダムの施工過程を考慮した平常時の応力状態を踏まえ、大規模地震を想定した線形解析・非線形解析を実施し、堤体内応力状態の特徴や損傷形態の試算結果

B岩手・宮城内陸地震(M7.2)により荒砥沢ダムで観測された極めて大きな地震動について、FEMによる再現解析と堤体の動的応答の原因考察

C胆沢ダムの築堤材料の室内試験結果を用いて、等価線形解析と累積損傷解析を行い、岩手・宮城内陸地震による胆沢ダムの沈下量の再現解析についての報告

以上の発表があった。
  大規模地震による耐震性能照査手法に関する基礎技術の研究は、ダム堤体の安全性の検討に寄与するものと期待されます。
 
 当日の研究発表に対して、優秀発表賞選考委員会が会場内で開催され、慎重な審査の結果、優秀発表賞として次の1編が選定され、優秀発表賞選考委員会 大町委員長より賞状ならびに副賞が発表者に対して授与されました。
 

【優秀発表賞】    

「岩手・宮城内陸地震における胆沢ダムの沈下量の再現解析」

(独)土木研究所 水工グループ水工構造物チーム 佐藤 弘行

論文発表風景
会場風景
優秀発表賞 受賞風景


『講習会の部』

  講習会小委員会では、毎年、若手技術者を対象として講演を実施しています。 今年は、3名の講師を御招きし、未曾有の外力に対する治水のあり方や、大山ダムの設計と施工、ダムの持続的管理と技術継承について講演して頂きました

『未曾有の外力や未経験の外力に対する治水のあり方』

中央大学理学部教授
  山田 正

『大山ダムの設計と施工 −基礎処理とその他の特徴―』

(独)水資源機構大山ダム建設所 所長
  新屋敷 隆

『次世代へ向けたダム・貯水池の持続的管理と技術継承』

京都大学防災研究所 教授
  角 哲也

  山田 正講師からは、リスクマネジメントに対するあり方について、治水の考え方が放射線の影響の理解にも役立つこと、未曾有の外力に対し今の設計基準で対応できるのか、日本の国際プロジェクトに対する取り組み方、降雨モデルの研究といった様々な研究内容の紹介、教育も含めた現状に対する警鐘も含め講演いただきました。
 
 新屋敷 隆講師からは、大山ダムにおける設計と施工について特に基礎処理を中心とした特徴を、コンソリデーショングラウチングの計画変更、複雑な水理地質構造へ対応するカーテングラウチング計画の継続的な見直し、実施工における連続配合切替の導入など留意点も含めた実施工の内容を講演いただきました。

 角 哲也講師からは、ダム技術継承について、米国エルワ川のダム撤去事業の内容についてお話がありました。ダム技術の継承については、本年開催された大ダム会議京都大会におけるテーマの一つでもあり、各国におけるダム技術の知識管理戦略、技術者教育戦略、多国間の技術移転、鶴田ダムで始まっているダム技術継承の取り組みについてお話がありました。また米国におけるダム撤去事業について、これまで得られている知見や日本においても今後ダム撤去における検証を総合的に判断する必要があるといったお話がありました。

 今回の3名の講師のお話を通して、「治水」を通じて我々技術者が社会に対して果たすべき役割について、より一層身の引き締まる思いをしました。

山田 正 講師 新屋敷 隆 講師
角 哲也 講師

 

 

   

発表論文一覧

1.「ダム貯水池に生育する植物ピコプランクトンの分布とその対策」

◆(独)水資源機構環境室 水環境課
  田作 光良

2.「カビ臭産生/非産生に着目した藍藻綱ユレモ目の分類同定手法開発の試み」

◆(財)ダム水源地環境整備センター 研究第二部
  木村 文宣

3.「重力式コンクリートダム門柱の実地震時応答における上部工の影響」

◆(独)水資源機構 総合技術センター 
   佐野 貴之

4.「嵩上げ重力式コンクリートダムの地震時挙動解析」

◆(独)土木研究所 水工研究グループ水工構造物チーム
  切無沢 徹

5.「岩手・宮城内陸地震による荒砥沢ダムの応答特性評価
                  ―周波数を考慮した巨大パルスの影響―」

◆芝浦工業大学 工学部 土木工学科
  岡本 敏郎

6.「岩手・宮城内陸地震における胆沢ダムの沈下量の再現解析」

◆(独)土木研究所 水工研究グループ水工構造物チーム
  佐藤 弘行

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